早稲田大学 創造理工学部 総合機械工学科
上道研究室

研究テーマ

エネルギーシステムメカニクス研究とは?

エネルギー変換に関する機械システムを対象に、これらを力学的法則に基づいた数理モデルで表現することに重きを置いています。シミュレーションおよび実験はこれに付随して実施するものであり、構築した数理モデルがどのようなものかを見極めるために実施します。

劇的に変革する社会と環境に調和するエネルギー機械システム

水素混焼ガスタービン燃焼器で発生する燃焼振動

ガスタービン燃焼器では,燃焼振動が問題になっています。燃焼振動は,燃焼の非定常性が圧力波の大きな振動(音)を引き起こす熱音響振動現象です。本研究グループでは,天然ガス(都市ガス)に水素を混合した燃料を用いた実験を行い,発振周波数に変化があることを発見しました。

そこで,燃料組成の違いが燃焼器内部での燃焼の状態(温度分布等)を変化させ,音響的境界条件に影響を与えているものと仮説を立て,この仮説のもと,種々の手法を組み合わせ,発振周波数を算出する過程を考案し,実験で得られた都市ガス専焼条件と水素混焼条件との発信周波数の違いを説明することができるモデルを構築しています。

本研究の一部は公益財団法人JKA2020年度機械振興補助事業の支援を受けて行われました。

  • 科研費基盤研究C「水素混焼ガスタービン燃焼器で発生する燃焼振動の発振周波数と卓越モードの特定」(2022-2024)
  • 日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究「音響的境界条件に音響インピーダンスを適用した燃焼振動現象モデリング手法の構築」(2019-2021)

都市レジリエンス向上のための機械システム設計

我が国では,地震や台風・集中豪雨による激甚災害が頻発しています。その被害は尊い人命や日常生活が奪われるだけでなく,経済・社会・文化的な損失にまで及びます。特に,2011年の東日本大震災以降,国土や社会機能のレジリエンス強化は喫緊な課題です。なかでも,災害時に電力やガスの供給といったライフラインが途絶した場合であってもエネルギー源を確保することは,最重要課題です。

本研究では,病院への分散型電源の最適導入量の組み合わせの提案と運用可能性の検証のためのシミュレーションツールを構築しています

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デジタル化社会のためのメカニクスベースモデルを用いた方法論の構築

ターボチャージャのエネルギー変換過程のモデリング研究

次世代モビリティにおける動力系の高効率化および高性能化を実現するため,CAEシミュレーションへの応用を念頭に置いて,ターボチャージャ(以下,ターボ)の軸受で発生する機械損失モデルの構築を行っています。

このモデルは,1次元圧縮性流体を仮定した数値計算からターボに作用する軸方向のスラスト力を求め(流体計算モデル),その結果を用いてスラストベアリング内の隙間幅を求めて,スラストベアリングおよびジャーナルベアリングで発生する摩擦損失を算出(摩擦損失計算モデル)します。

AIを利用したプラント配管自動ルーティング

プラント等の配管設計においては非常に多くの要求を満たすことが求められます。現在,配管ルーティングは熟練技術者の経験に頼る部分が大きいですが,人の手による設計解の探索では,数多くの要求を満たす設計解を得ることができない可能性があります。このような問題を短時間で解決するため,様々な要求を全て満たす,高信頼性配管を自動でルーティングする手法の実現が求められています。

要求事項を目的関数として設定して,最適な配管レイアウトを探索する多目的最適化問題として研究を行います。これまでにLOF (Likelihood of failure) と呼ばれる配管の故障可能性を示す指標に加え,配管長さと配管同士の干渉を指標として遺伝的アルゴリズムを用いて多目的最適化を行いました。今後は最適化のアルゴリズムのなかに強化学習を取り入れることや,配管ルーティングの実務的なニーズに応えた目的関数を新たに提案することを計画しています。

過去の学位論文題目